物語が一気に加速して目眩すら感じる「ノーゲーム・ノーライフ 三巻」書評

ゲームで全てが決まる世界【ディスボード】――人類種の王となった異世界出身の天才ゲーマー兄妹・空と白は、世界第三位の大国『東部連合』に、その大陸全領土と”人類種の全権利”を賭けて行う起死回生のゲームを仕掛けたが、直後。謎の言葉を残して空は消えてしまった――……引き離された二人で一人のゲーマー『 (くうはく)』
消えた空の意図、残された白、人類種の運命は! そして獣耳王国(パラダイス)の行方は――!?
「言ったろ”チェックメイト”って。あんたらは……とっくに詰んでたのさ」
対獣人種戦決着へ――薄氷を踏む謀略が収束する、大人気異世界ファンタジー第三弾!

via: Amazon.co.jp: ノーゲーム・ノーライフ3 ゲーマー兄妹の片割れが消えたようですが……? (MF文庫J): 榎宮祐: 本

早いもので、このシリーズも三巻目に突入した。

独特な地文も、若干混乱するカメラワークもここまで来ると慣れてきて快感に変わってくる頃合い。

面白い物で、最初は「筆力がまだまだ」とか言っておきながら、その文章に私の方が慣れてしまった。ただ、やっぱりカメラワークの点で混乱する描写が多々ある。ここらへんはやっぱりこれからに期待すると言うことなのかな。

さて、物語は一気に一つ目の山場を迎えた。強大な領土と強力な力を持つ獣人族とのゲーム。スピード感溢れる描写と、著者らしい軽い文体が心地良い。

キャラクターたちも相変わらず強力な個性でもって主人公たちを取り巻き、展開されるゲームの数々も突拍子もないほどにバカバカしく大げさで大変よろしい。

そして、この巻でシリーズは主人公の一人でありヒロインの一人である白にスポットライトが当たる。

引きこもりにして人見知り、それでいて計算高く独占欲が強くて自身に正直――そして空からは決して離れられない。そんな彼女が一人取り残され、自身を見失い、空を見失う。一巻からなんとなく示唆されていた二人の一部が垣間見える。これからの展開にもワクワクはつきない、良い伏線の張り方だった。

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話は変わって、このシリーズはいわゆる「俺TUEEE」に分類されると思う。

主人公が最強であり、英雄であり、他の誰もを寄せ付けない力を持っている。

ただ、このシリーズは今巻でそんな主人公達に一つの答えを出している。「自分達は既に完成されている」「これ以上の成長はない」「『空白』は絶対に負けない」「負けてはいけない」

その圧倒的なプレッシャーを主人公サイドでは心理描写でさらりと流し、回りのキャラクターからは畏怖の目線で重く受け止めさせる。そのギャップの付け方には舌を巻いた。

いや、ギャップの付け方としては、むしろ典型的な例だとも思うのだけれど、「ひょうひょうとそれを受け止める主人公達」というこのシリーズの主人公たちの描き方に純粋にショックを受けたんだ。

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次巻の正確な時期はきまっていないようで。ワクワクしながらもヤキモキと待つとしたい。