壮絶な過去と統合失調症を抱えた著者が、36歳にして出会った25歳年上のボビー。苛烈で型破りで、そして誰より強靱なふたりの愛を描いた感動のコミックエッセイ。
読んだあと、しばらく脳の中で整理がつかずにボケっとそのまま二時間ほど経っていた。
感動したとか、感激したとか、笑ったとか、勇気をもらったとか。とにかくそういう風に言い表せられないくらいに、なにやらごちゃ混ぜになった気分にさせられる。とにかく、「ショック」を受けたというのが適当に思える。
本著は、卯月 妙子が歩道橋から身を投げ出す場面から始まる。そこから一気に過去へと飛び、彼女の人生、その一端を見る事が出来る。いや、押し付けられる。
一方的な「卯月 妙子」自身の世界、価値観、主張を淡々と流し込まれるのだから、たまらない。冷静に考えれば、自己中心的な考えは決してうなずけるものではない。しかしインパクトを伴う彼女の人生が、読んでいる私たちの価値観すらも捻じ曲げよう、捻じ曲げようと訴えかけてくるのだ。たまらない。
彼女は自分自身に起こる全てを受け入れているようで、それを素直に表現してくる。全てを。主観だけで描かれているから、素直に受け入れられると美しい話に見えなくもない。しかし、その裏側を思うと、彼女の周りに居る人々を思わずには居られない。スッキリとしながらも崩れた線に、著者の精神状態が見えるようで恐ろしい。
一コマ一コマに渦巻く執念のような何かを感じるようで、中々前に進まない漫画は初めてだった。
ある意味で、生きるってこういうことなのかもしれないな、と納得できる。かもしれない。