カテゴリー別アーカイブ: コミック

ショックだけを与えられて無責任に放り投げられる「人間仮免中」感想

壮絶な過去と統合失調症を抱えた著者が、36歳にして出会った25歳年上のボビー。苛烈で型破りで、そして誰より強靱なふたりの愛を描いた感動のコミックエッセイ。

読んだあと、しばらく脳の中で整理がつかずにボケっとそのまま二時間ほど経っていた。

感動したとか、感激したとか、笑ったとか、勇気をもらったとか。とにかくそういう風に言い表せられないくらいに、なにやらごちゃ混ぜになった気分にさせられる。とにかく、「ショック」を受けたというのが適当に思える。

本著は、卯月 妙子が歩道橋から身を投げ出す場面から始まる。そこから一気に過去へと飛び、彼女の人生、その一端を見る事が出来る。いや、押し付けられる。

一方的な「卯月 妙子」自身の世界、価値観、主張を淡々と流し込まれるのだから、たまらない。冷静に考えれば、自己中心的な考えは決してうなずけるものではない。しかしインパクトを伴う彼女の人生が、読んでいる私たちの価値観すらも捻じ曲げよう、捻じ曲げようと訴えかけてくるのだ。たまらない。

彼女は自分自身に起こる全てを受け入れているようで、それを素直に表現してくる。全てを。主観だけで描かれているから、素直に受け入れられると美しい話に見えなくもない。しかし、その裏側を思うと、彼女の周りに居る人々を思わずには居られない。スッキリとしながらも崩れた線に、著者の精神状態が見えるようで恐ろしい。

一コマ一コマに渦巻く執念のような何かを感じるようで、中々前に進まない漫画は初めてだった。

ある意味で、生きるってこういうことなのかもしれないな、と納得できる。かもしれない。

とにかくテンポ命の新感覚すぎるラブコメ「恋愛暴君」感想

男子高校生・藍野青司のもとに、任意の二人を強制的にキスさせるという不思議アイテムを持った死神風の少女・グリが現れた。強引にキスを迫ってくるグリに対し、青司は……?
メテオの新星・三星めがねが贈る、抱腹絶倒ラブコメディ第1巻!

コメディに突き抜けすぎる

とにかく設定やら何やらが軽い。名前を書くとキスをして恋人同士になる「キスノート」は勿論、最初のヒロインである「グリ」は恋愛感情を持たないながらホモ趣味。主人公とキスをしてもきょとんとした表情をしているのは何だか新しい。

主人公も主人公で、ラブコメでよくあるような鈍感主人公ではなく一般的な常識と恋愛観を持っている。こんな二人がラブコメに放り込まれるのだから暴走するのは当然のことだ。

後々追加されるヒロインもひどい(褒め言葉)。主人公が元々好意を抱いていた女子生徒はヤンデレだったし、そのヤンデレを好きな女の子も登場し三つどもえ、四つどもえの体相をなしてくる。

とはいえ、ラブコメらしさを忘れているわけでもない。グリの世間知らずながら特殊な性癖のせいで暴走し、それに巻き込まれる主人公の苦悩は計り知れなく面白おかしい。絵柄もかわいいし、まどろっこしいヤキモキさなどはない。

思うに、これは美少女ゲーム、ぶっちゃけエロゲー的な設定を無理矢理にでも一般的なラブコメディに持ち上げた作品ではないのかと思う。アホらしい設定を真面目にここまで持ち上げてみせるアホらしさが素晴らしい。もちろん褒め言葉だ。今回はキャラクター同士の顔見せと言った具合で、本格始動は次巻からといったところ。次巻が楽しみだ。

荒々しさが皮肉にもコンパクトにすっきりと「同人王」感想

概要

特に努力もしたことがなく、人付き合いも破滅的に悪く、しかしプライドだけは高く。典型的なダメ人間であるタケオはズブズブと人生のどん底に落ちていく。

その中で、ついに出した自身への答えが「同人誌」を出して稼ぐ事。

タケオの人生最大の賭けが幕を開ける。

典型的なサクセスの皮を被ったリアル

タケオの向こう見ずな行動や思考は、しかし創作における私たちの無意味な自信やプライドに通じるところがある。

物を作るという行為それ自体が私たちに及ぼす精神状態。その様を見事に、リアルに描いて見せているのはさすがといったところ。

しかしお世辞にも、単純なサクセス物としてこの本を読むとあまりにもご都合主義であり、淡々と時間軸が進む。枝葉が分かれていないシンプルな話の流れは、あまりにもタケオの成長がまっすぐ描かれて過ぎているのだ。伏線や目立たせたいコマがさらりと流れていき起伏に乏しいとさえ思えてしまう。

一方で「こういうものなんだよな、うんうん」というじんわり来るものも確かにあるのだ。創作ってそういうもんだよな。わかる、わかるよ。回りは天才で、俺は自分を信じることでしか自我を保てないんだよ。なんといわれようと、心の中では俺が一番だと思い続けてないとガラガラ崩れそうなんだよね。・・・みたいな。

著者の魂の声が聞こえるか

web漫画独特の荒々しさ、蛇足感、無駄ゴマがあまり見受けられない。スッキリ。コンパクト。その理由はあとがき漫画に描かれている。

そこには著者がweb連載時に感じていた葛藤や苦悩が赤裸々すぎるほどにつづられている。その数ページの濃さといったら。まるで濃縮された呪詛だ。ドロドロとした感情が煮詰まり、ぶちまけられているように思う。それでも最後に「ありがとう」と言ってのけた著者に拍手を送りたい。

そうして出来上がったと知ったこの本を、もう一度最初から読み返すとまた違った味わいを感じる。私はこの物語がたまらなく愛おしい。

何度も何度も叩いて作り直された物語は、残念ながらコンパクトにまとまってしまった、というのが私の印象だ。

それでも、この作品に魂が詰まっているのを確かに感じる。

安定した疾走感とこだわりと欲望が見える「絶体絶命英雄」感想

概要

お節介にお節介すぎる主人公「志村 九地(しむら きゅうち)」は、車に轢かれそうな猫を助けようとして、死んでしまう。しかし、もうろうとした意識の中で、彼は誰かに呼ばれる。

目覚めれば、彼は少女の体に入り、化け物に囲まれていたっ。

という、何処の誰かもわからぬ女の子に憑依? し窮地を救うという物語。

わかりやすい。ものすごく。

感想

とにかくテンションとスピード感を保つ事に終始している。勢いのある大ゴマ、なびく衣服、鮮やかな色。元々はニコニコで漫画連載されているものらしく、一ページ三つの大枠が充てられている。この状態で物語の緩急をつけられているのは中々興味深い。

全編フルカラー。独特なかわいらしい絵と彩色がまず目を引く。

キャラクターたちの性格も単純で、話も複雑な事は特になく、小難しい概念などを理解しなくても良い。窮地に陥る女の子を、どのように救うか。その一点のみに集約されているのが素晴らしい。

黒幕らしきモンスターは、幸せな少女たちが絶望に染まり、窮地に陥ったその瞬間を摘み取るのが目的なようで、その点どこか魔法少女物に通じるものがある。ただ、窮地に陥る少女に入るのが男というあたり、欲望に突き抜けている。

この一冊には、導入となるオーソドックスなモンスターたちに襲われる少女と、成績優秀超真面目女学生が尿意を我慢する話が含まれている。

まあ、肩の力を抜いて羞恥に歪む少女にニヤニヤするのも良いと思うよ。

どうやら「売れれば二巻が出る」ようで。がんばってほしいと切に願う。

さわやかな不思議さが独特のジュブナイル「ひとりぼっちの地球侵略 一巻」書評

出会いと地球の運命は?新感覚SF青春譚!

人口70万に満たない、
そこそこ栄えた地方の
そこそこな中心都市・松横市。
この春、高校に入学する広瀬岬一は、
入退院を繰り返す双子の兄・凪とは正反対の健康優良児。

入学式当日、
岬一の前に現れた
“ひどい変わり者”の2年生・大鳥希。
「命をもらいに来た」と岬一に迫るが、
岬一の身体は負った傷をたちどころに治してしまう。
驚く彼に、彼女は態度を一転させて告げる。

「一緒にこの地球を侵略しましょう」と――

【編集担当からのおすすめ情報】
「とある飛空士への追憶」のコミカライズで大躍進した
新鋭・小川麻衣子の初オリジナル連載!

via: Amazon.co.jp: ひとりぼっちの地球侵略 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス): 小川 麻衣子: 本

自称宇宙人の女の子に振り回される主人公。けれども本当に宇宙人が自分を襲ってきて――といったわりとオーソドックスな掴みから、けれどもどこかのんきでほのぼのとした描写から新鮮さを感じてしまう。

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