「エンタメ」カテゴリーアーカイブ

本、映画、アニメ、動画などといった娯楽作品関係の記事をここにまとめています。

悪と悪の衝突を見事に表現している二人対戦ボードゲーム「魔軍棋MA-GUNGI」感想

今回ゲームマーケットで初顔出しとなった「魔軍棋MA-GUNGI」は二人用のカードを使用したボードゲームだ。

施設カード、兵カードという二種類のカードを使い、将棋ともシミュレーションゲームとも言えるようなスタイルで遊ぶ。面白いのはゲームの最初に誰がどのカードを所持するのか、というのをドラフトにより決定し、お互いのカード構成を理解した状態でゲームがスタートするところ。

構成はお互いに分かってるとはいっても、スタート時はこのようにカードが全て伏せられた状態でスタートする。これらは全て兵であり、さながら軍と軍が衝突する前の硬直状態を見ているようだ。

兵は上下左右の四方向にしか動けず、カードも少なくフィールドも狭いので戦況は読みやすい。しかし、そこに絡むのが兵達それぞれの能力だ。

カードにはそれぞれ防御力と攻撃力が設定されており、単純に強い物から遠距離攻撃ができるもの、連鎖攻撃、味方兵との位置入れかえ、突進などなど。バラエティ豊かな構成になっている。相手にどんな構成の兵がいたかを思い出しながらこちらも兵を編成、配置していく。ゲームは準備段階から既に始まっているのだ。

兵の種類は大きく分けて三種類。その存在そのものが勝敗を決めるヒーロー、強力な能力を有するモンスター、軍勢で襲いかかるトループだ。

単純にヒーローを集めれば強いというわけでもなく、モンスターは強力な能力があるし、トループはその軍勢という特性上しぶとく生き残りいつまでもフィールドに居続ける。

上記兵の種類の他、オーク、アンデッド、ゴブリンなどそれぞれの種族もあり、これまた面白い能力を有している。そういった個性、特性を活かして軍隊を操り、敵をおいつめていく。

勝敗を決める条件は「敵ヒーローを全滅させる」「敵兵カードを三枚以下にする」「敵本陣まで味方兵士を移動させる」「投了」「10ターンが終わった所で軍構成を点数化して競い比べる」と、こういったゲームには珍しくいくつもある。これがまた戦略に広がりが出来、思考戦を盛り上げてくれる。

ゲームの特性上、カードそれぞれの能力や構成を覚えなければいけないが、全部で32枚しかないので一度やればなんとなく覚えられる。

プレイ時間も一時間程度とお手軽ながら濃いプレイになりやすいので満足感もあり、もう一回、もう一回とリトライ性も抜群だ。

悪VS悪というコンセプトもゲームプレイとマッチしていて没入感を高めてくれる。

お手軽な対戦物をお探しな人にはピッタリだろう。お勧めのゲームだ。

黒い笑いが新しい、何人でも遊べる推理パーティーゲーム「ブラックストーリーズ」感想

50の「黒い」事件を推理する

「ブラックストーリーズ」のルールは単純明快。カードの表に書かれた事件の真相を探るという物だ。

カードの裏には事件の真相が書かれており、問題の出題者はカードを掲げ、答えを見ながら他の参加者の推理に対して「はい」「いいえ」「わからない」のみで返していく。

しかし、単純に思えてその事件の真相を探る、というのが大変に難しい。というのも、提示される事件というのが「電話をしていたため彼女は死んだ」や「窓ガラスが砕けたため若者は死んだ」というような簡潔な文章のみだから。

それについて、参加者は自由に意見を交換しつつ、出題者へと質問していく。

「その若者は男ですか?」
「彼女は恋人と電話していた?」
「窓ガラスで死んだの?」
「クスリでもやってたの?」
「家族を殺した?」

それに対して帰ってくる返答で、少しずつ事件の真相に近づいていく。

そのトライアンドエラーが最高に楽しく、そして明らかになる事件の真相のブラックさにクスりと来る。一筋縄じゃ行かない楽しさがこのゲームにはある。

何人でやっても面白い

このゲーム、推奨人数は「二人~」とある。つまり二人以上居れば何人居ても構わない、単純なゲームだからこその許容と言える。そして何人でやっても楽しさは変わらない。むしろ、参加者が増えていく程面白さは上昇すると思う。

他の人の推理はもちろん、突拍子の無い質問に「はい」という答えが返ってきた時の驚きは何物にも変えがたいこのゲームだけの感覚だろう。

質問が続くにつれ、皆の集中力が高まり思考に沈む様子は見ていて楽しい。あれじゃない、こうじゃないという話し合いも連帯感を感じる。

制限時間を設けてみれば、時間が進むにつれて焦りも出てきてハラハラしてくる。

「勝ち負け」ではなく「納得と悔しさ」

このゲームにあるのは、事件の真相を解けるかどうかという概念があるのみで、勝ち負けというものはない。さらには「ブラックストーリーズ」の名の通り、良い意味で期待を裏切らない黒い真相が待っている。最終的に私たちが味わうのは、事件を解けなかった悔しさや納得という感情だ。

次こそは解いてやろう! 惜しいところまで行けた!! という感覚がとても心地良い。一筋縄じゃないかない、けど近くまでは行ける。そういう絶妙なバランスが保たれている。私はまだ一問も正解まではたどり着けていない。悔しい。

答えを知った事件では遊べない

ブラックストーリーズはその性質上、一度答えを知ってしまった事件をもう一度遊ぶ事はできない。ただ、メンバーが毎回入れ替わるなら知っている事件は出題者に回ると良いだろう。

一度答えを知った事件は遊べないといっても、50個の事件があるのでそうそうすぐには遊びきらないだろう。また、ブラックストーリーズは他にも沢山シリーズがある。今回の日本語ローカライズをきっかけに次のシリーズも出る事を期待したいと思う。

文句なく面白く、黒い笑いを提供できる楽しいパーティーゲームだ。

実際に遊んだ記録もある

日本販売元の「グループSNE」が実際に遊んだ議事録を提供している。

Group SNE | 製品情報 | ボード/カードゲーム | ブラックストーリーズ リプレイ

ニコニコ生放送などで配信したりと、このゲームの普及にかなり本気のようだ。ブラックストーリーズに興味を持ち、実際どういった雰囲気になるのか気になる人はチェックするといいだろう。

ただ、先述した通り「回答」を知るとその事件を遊べなくなってしまうので注意だ。私は上記議事録の事件をまだ遊んでいないので最後まで読んでいない。

誰にでも遊びやすく、艦これの雰囲気をTRPGに綺麗に落とし込んだ「艦これRPG 着任ノ書」感想

言わずもがな、大人気ブラウザゲームがまさかのTRPG化ですね。一度遊んでみて大体の感触が掴めたので感想を書いていこうかと思いますよ。

リプレイはTRPG・艦これ未経験者を交えて丁寧に進行

まず、リプレイからして「初めて」の人たちを集めているのに好感がもてました。艦これは知ってるけれどTRPG初めて、TRPGは知ってるけれど艦これ初めてという人たちが、どういう風に遊ぶのかという雰囲気を掴むことが出来ます。

キャラクターに属性が加えられていく様や、状況により空想・妄言を言い合いながら「本当にそうなる」一連の流れは本当にTRPGらしい。ここまでやって良いのがTRPG、というのが分かるリプレイは個人的に好きです。

全体的に進行も丁寧で、チュートリアルのように進んでくれて、読んだ後すぐに「遊べる気がする!!」と思えます。

そもそもルルブにリプレイがついているというのは、初めてTRPGを遊びたいと思う人たちにはとても嬉しいことですよね。

テンプレート方式によりキャラ作成の時間を短縮

賛否あるようですが、キャラクターを一から作成するではなくすでにステータスが決まっているキャラクターを選ぶ「テンプレート」という方式は艦これに合っていますし、なにより初めての人たちの負担を減らす事が出来ます。特に艦これを知っている人たちからすれば、艦娘たちのステータスは元々決まっているのが当たり前ですしね。

テンプレート方式だからといって、選べるキャラクターは三十人程度。さらには四月に拡張も発売が決定し、さらに選べる艦娘は増えるようです。特徴もきっちり捉えていて「ああ、そうそう、こんな感じだよね」という物に仕上がっています。艦これを知っていればすっと理解できるものになっていますね。

さらに、数行のキャラクター解説とリアクション表に記載されている台詞から艦これ知識の無い人にも優しい設計。そもそも艦娘という存在自体、背中に砲台をしょっていたり弓を持っていたりして容姿が性能を表しているので、「こういう子なのかな?」という想像のみでのプレイでも的を得ていたりします。

サイコロフィクション特有の遊び易さと楽しさ

艦これRPGの基礎となっているサイコロフィクションというTRPGルールは判定が少し特殊ではありますが、一度マスターしてしまえば行為判定も攻撃判定も回避も全て同じ方法で行うのでプレイに集中できます。舞台も大量にある表によりとても「なんじゃこりゃ」な物になりやすく、お話の種が出来やすいので動きやすくなっています。艦これRPGでTRPGに興味を持てば、他のサイコロフィクションシリーズにも手が伸びやすいというのもいいですね。

手番や感情などといったルールも遊びやすさに繋がっています。誰と誰がどういった環境にあるのか、どういう感情を抱いているのか。さらには手番があることによって、それぞれがどう物語を薦めたいのかという「主導」を握ることができるというのが、なによりもTRPGらしくて素敵だと思います。

さらに、今回は手番の人だけ、もしくはもう一人という括りではなくなっており、原則全員登場している事になっています。常に物語に参加できるのは嬉しいですね。

イベントカードという話題の提供

艦これRPGの大きな特徴に「イベントカード」があります。そのシーンがどういった物になるのか記入されたもので、補給や遊びなどの演出の他に、キーワードという項目があります。これが楽しい。突拍子の無い話題に頭がまっ白になったり、思わず吹きだしてしまう物があったり。「それじゃあこのキーワードどうしよう?」と皆でワーワーこれから起こることを予測しあえます。

艦これを完全に再現した戦闘

あらゆる意味で、原作であるブラウザゲームの艦これは「ランダム要素」との戦いでありますね。これをTRPGでも出来るだけ再現しようと頑張っているのが見て取れます。プロットや判定にそれは秩序に現れているでしょう。

戦闘ルール自体も艦これに合わせていて、フェイズが細かく分かれているのも面白いです。原作の艦これを遊んだことがある人はスッと入る事ができるかと思います。

まとめ

とりとめのない内容となりましたが、艦これからTRPGに入る人にはとても遊びやすいシステムになっているかと思います。サイコロフィクションらしいサイコロフィクション。TRPG好きもきっちり受け止める姿勢にはほれぼれします。

エラッタ、FAQも迅速で、ツイッターによるフォローを見ていると本気具合が窺えます。

これを機にTRPGを遊ぶ人がぐっと増えると嬉しい限りです。

 

 

小説家らしい独特な解釈が面白い「死なない生徒殺人事件―識別組子とさまよえる不死」感想

「永遠の命を持った生徒がいるらしいんですよ」生物教師・伊藤が着任した女子校「私立藤凰学院」にはそんな噂があった。話半分に聞いていた伊藤だったが、後日学校にて、ある女生徒から声をかけられる。自分がその「死なない生徒」だと言ってはばからない彼女だったが、程なく彼女は何者かの手によって殺害されてしまう―。果たして「不死」の意味とは?そして犯人の目的は!?第16回電撃小説大賞“メディアワークス文庫賞”受賞者・野崎まどが放つ、独創的ミステリ。

「不死」という物を取り扱う小説は数多あります。バトル物ならば特に、キャラの特徴としてはチョイスしやすいポピュラーな要素ですね。

主人公である伊藤は、とある女子校に着任してすぐ「永遠の命をもった生徒」のウワサを耳にします。最初は信じないながら、そのウワサはことある毎に彼の耳に入るにつれ立場上、命という物が何かを考え始める。

そんな彼の前に、ついにウワサの生徒と相対するが――。

という導入から始まるミステリはしかし、言うほど複雑な構造をしていない。登場人物はそれほど多くないし、すぐに答えも出る。しかしそれでも「不死」という物がなんなのか、主人公が答えに迫っていく様は淡々とした文章も相まって緊張感があります。

個性的なキャラクターが物語自体の舞台装置になってるのも面白い。どんでん返しに次ぐどんでん返しもなるほど、と唸ってしまいます。

死なない生徒についてことある毎に疑問を投げかけてくる同僚。不死な人と友達になりたい女生徒。自らを不死だと名乗る生徒。

キナクサイ。キナクサイよ!

けれども、彼、彼女らとのやりとりが軽快で、ズレていて、楽しいんですよね。

後半の静かな、一気に収束する物語はほどよい刺激になります。全体的に静かな、それでいてゾクっとする気持ち悪さ。

この手の物語を良く読む人にとってはありがちとも取られるかもしれませんが、軽く変な物語を読みたい人にはお勧めではないでしょうか。

百合をするためのTRPG!「える・えるシスターTRPG」感想

百合風味学園コメディRPG『える・えるシスターTRPG』

体験する機会に恵まれましたので軽く感想をば。

百合をするための素材と要素がきちんと揃ってる

ステータスや要素、ルールなどはPC達が百合をするために必要な物は揃っている感じですね。

コスプレイヤー、クール、めがね、腐などなど。おもしろみのある名前の属性がそろっていて、それがゲームに影響を及ぼしています。もちろん突き詰めるとPC同士の優劣が色濃くなるのですが、そこは同人TRPG、「こういうキャラ」が作りたいという欲求を素直に受け入れてくれます。

心と心の距離をマップに

特殊だなと思うのは、PC達の距離感をそのままマップに落とし込んでいる点。物理的な距離ではなく、お互いの親密度をマップにしているんですね。その名も「ココロマップ」。マップの移動は一緒にシーンを演出した相手に任せるというのも面白いです。しかし、リソースである「ハート」もマップに置かれるので、移動するのに躊躇したくなる場面もあります。

シーンは少し複雑かも

日常シーン、対決シーン、暴走シーン、すれ違いシーンなど。どのようなシーンを演出するのかという選択肢も多いのですが、その分いつ出来るのか、それでどうなるのかという把握が難しいですね。また、シーンの中身はプレイヤー達に任されます。

キャンペーン前提という印象

「親密度」という他PCへ対するステータスは最高値100なのは良いとして、それが1セッション10程度程しか上がらない、シーンなどを積み重ねていく上でPLに内容が一任される部分が多いという事で、どちらかというとキャンペーン前提になっている気がしますね。

まとめ

戦闘一切なしの女の子同士のやりとりが遊べるTRPG、色々な属性の女の子をシステム自体が対応している。というのは面白いです。スッキリとしたステータスや、かわいらしいキャラクターシート。見やすいDTP等々。力の入れようが窺えますね。遊んでみると、なるほど女の子達の感情の動きが視覚化されていてロールしやすいです。

ただ、システムがサポートしているのはここまでで、これを遊べば必ず女の子達が百合百合し始めるといった所まではいかないので、プレイヤー達がどのような百合へ持っていくのかを考える必要があります。

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百合風味学園コメディRPG『える・えるシスターTRPG』

原作もどうぞ。

雪風のタッチボイスの一つがドヤ顔で「シャア」のモノマネをしているように聞こえてならない #艦これ

ハロハロー。皆さん艦これ楽しんでますかー?

私も割とヘビーに楽しんでますよ。軍艦とかまだ良く分からないですけれどね。毎日楽しくツンツンしてます。で、雪風をゲットしたんですが素直な感じで大変よろしいですね。かわいいです。

しかし彼女、たまに変なテンションで喋る時があって、いわゆるタッチしまくりな時に発する「不機嫌ボイス」なわけですが。

「あの、雪風に、なにか、ごようでしょうか」

という精一杯ドスを聞かせたツモリの声を出してくれるわけですよ。かわいい。

けどなんかどうにも聞こえるんですよ。ええ、シャア大佐に。なんかイントーネーションというか語感というか。にてる・・・気がする。ちょっとだけね、ちょっとだけ。

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こう、提督の前で、「しれぇ!私モノマネできるんですよ。『あの、雪風に、なにか、ごようでしょうか』・・・どうですか!?」キリどやぁフンス!

みたいな感じ。ああもうかわいいなあ。

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という話を身の周りにしたら「どう聞いても聞こえないんだが」「なわけねーよ」「脳外科いけくそが」とか言われました。泣いてないもん。

声を聞いたことない人は軽く検索すると動画とかで上げてる人がいるかもね! 便利な世の中ですね。

リモートデスクトップを使ってスマフォで艦これしよう「Splashtop」の勧め #艦これ

トップリモートデスクトップアプリ | iPad からコンピューターにアクセス | Splashtop Personal | Splashtop

皆さん艦これ、楽しんでいますか? 私ものんびりと楽しんでいます。今のところ3-2で駆逐艦のレベルあげにいそしんでいますよ。

艦これはFlashなどを使っている関係上基本的にはPCでしか遊べません。けど出先で遊びたい!! ・・・そうだ。リモートデスクトップを使おう。

というわけで、PCにリモートデスクトップを導入し、「スマフォからPCにアクセス」して艦これを楽しみましょう!

艦これに接続してるのはPCなので、電車で移動中トンネルなどに入ってスマフォの接続が切れても、PC側は艦これに接続したままなので猫さんが出てくることもありません。不必要にログインログアウトを繰り返す事もないので運営さんにも優しいのです。

私もいくつかリモートデスクトップソフトを試しましたが、安定して稼働し、なおかつ設定その他が簡単なのは「splashtop」です。

クライアント、そして月額料金が発生しますが回線が遅くてもかなり快適に利用できるので愛用しています。実際少しお高め。けど快適なんですよねえ。

トップリモートデスクトップアプリ | iPad からコンピューターにアクセス | Splashtop Personal | Splashtop

手順は簡単。まずサイトにアカウントを作成し、接続用のアプリをダウンロードして、入りたいPCにstreamerを導入。あとはsplashtopのアカウントにログインすれば接続できます!!

アカウント作成は右上の「ログイン」から、移動先のアカウント作成でいけます。

さくっとアカウントを作成してログインすると、このような画面に移行します。

上の「Anywhere Access Pack」を購入すればどこからでも接続できちゃいます。

毎月払うか、それとも一年に一度まとめ払いするかを選択しましょう。

これでスマフォ側、ログインするPC側でアカウントにログインすれば艦これし放題です。ヤッホーウ! 電車の中とかでも普通にできちゃいますよ。レッツお外で艦これライフ!

あ、リモートデスクトップで艦これをするにはchromeの「艦これウィジェット」がお勧めですヨ。

【艦これ】小さい画面で仕事中にコッソリ。Chrome拡張機能の「艦これウィジェット」 #艦これ | め~んずスタジオ

画面サイズを調整できたりするので丁度良い感じで遊べちゃいます。

超絶なカオスとキッチリと調整されたバランスが同居するアイドルハント&レッスンTRPG「どるばこ!」

猟奇的破壊集団TRPGサークル「なめくじたべぞう」さんの同人タイトルです。

簡単に紹介すると、プレイヤーはプロデューサーとなり、アイドルを「ハント」して「レッスン」し、来るべきフェスへと向けて準備を整え、これを成功させるというものです。

What’s 「どるばこ!」? – Togetterこちらも読んでみるといいかも。

どるばこ!+その他の委託とかイベントとかのお知らせ | なめくじたべぞう委託情報はこちら。

わかりやすいシステムとインパクトのあるコンセプトです。ルールもサマリー一枚に収まれているのと、キャラクターシートにできる事がまとまっているので全体が見通しやすくなっております。

アイドルを捕まえ育成する楽しさ

メインを担うのはプロデューサーではなくアイドル。現実と同じでこのシステムでもアイドルがメインとなります。システム上でも、ロールプレイ上でも。プロダクションはその大きさに合わせて雇えるアイドルの数が変わるのです。

沢山のアイドルが増えればもちろん最後の舞台、フェスでとても有利になっていきます。まずはアイドルをハントしていかなければ。

このアイドルを「ハント」するのがまず楽しいのです。トランプを引き、その図柄にあわせたアイドルが召還されます。性格が設定されており、それにより多様の成長方針があってこれまたバラエティに富んでいたりして。

プロデューサー:「ねえねえ、アイドルに興味ない?」

印象・毒舌:「え? なにいきなり。意味わかんないんだよね、キモイ死ね☆」

プロデューサー:「え、いや、えっと、スカウトなんだけれど。芸能界とか、興味な――」

印象・毒舌:「証拠出してよ。視界に居られると気分悪くなるんだよね。これ以上ぐだぐだやってると警察呼ぶよ♪」

のような小芝居を挟むようにしたりするとさらに面白いです。アイドル役はGMに任せても良いし他のプレイヤーが率先してやるときもありますよ。どちらにせよかなり盛り上がります。

続いて育成ですが、レッスンすることによりアイドルたちはドンドン特技やステータスが上昇していきます。一般的なシステムにおけるレベルアップのような形で、これまたワクワクするところです。自然と愛着が出来てきたりして、ロールプレイに熱が入ります。

プロデューサー:「今日はグラビアだ!」

印象・努力家:「う、うう、恥ずかしいですけどがんばります!!」

プロデューサー:「その表情いいよ!! いいよいいよ!!!」

印象・努力家:「キャ! どこから撮ってるんですか! やめてください! やめてください!!」

すっごい楽しいです。掛け合いもさることながら、現在進行形でキャラクターが育つというのは中々他のシステムでは味わえないのでとても新鮮。

一人六役なんて当たり前

そんなシステムですから、最終的にはアイドルが六人くらいになることはままあります。皆性格が分かれているので、結構被らずにそれぞれの個性が発揮されていきます。プレイヤー達でわいわい「この娘、最近レッスンしてないからそろそろ拗ねてるんじゃない?」とか言いつつ相談してみたり。完全にシステム上の論理思考から外れた判断をし始めます。ただ、それで良いと思えます。

サイコロフィクションをアレンジした手番方式を採用されていますが、よくあるような「手版じゃないからロールプレイできない」ということもなくジャンジャン口を出していく感じも良いですね。

そして、それをさらに促進される仕組みが「パッション」の投げあいです。

飛び交うパッションでロールプレイ合戦が

プレイヤーは皆手札にトランプを持っております。他人のロールプレイが面白かったりした場合(パッションを感じた場合)、これを譲渡する事ができます。また、GMからも飛んでくるので、とにかく隙あらばロールプレイしてやろうと盛り上がります。

プロデューサーでがんばるもよし、アイドルでがんばるもよし。

私の場合やりすぎて頭が痛くなってきます。が、楽しいからやめられないんですよね。ひどいプレイヤーです。

そしてフェスへ

フェスは文字通りフェスです。コンサートのようなものでしょうか?(実はよくわかってない)

ステージに立ち、レッスンの成果を皆に見せるのです。ここは大体完全にサイコロフィクションの体をなしています。トランプの図柄に合わせた指定特技へとダイスで判定を行うというシンプルなもの。サイコロフィクションが初めてでも、かなり簡略されているので一度やるとすぐに理解できるものに仕上がっています。

ものまねを披露したり、手品を披露したり、歌ってみたり、キグルミアクションしてみたり。ファン獲得のためにアイドルたちが奔走します。今まで手塩に育てたアイドルだけに、自然と皆ロールプレイやっちゃうんですよね。

最後には判定に成功した数で集計し、シナリオによりフェス成功・失敗が決まります。どちらにせよ達成感をともなう、「やりきった」感が味わえます。

垣間見えるブラックさ

さて、そんなこんなですばらしく楽しいシステムなのですが、そこかしこにブラックな要素が垣間見えます。

アイドルを「ハント」するのもそうですが、プロデューサーのアビリティ使用のリソースを「寿命」と称したり、ドリンクパーティーを行いながら影でアイドルを解雇したり。

プレイ中にも「寿命を減らせば~」や「そのアイドルはもう使い潰して~」など、意地の悪い会話がなされます。そういうところがさらに深いなと感じさせられますね。

まとめ

とにかく人を選ぶな、という印象ですが、ロールプレイに命を掛けているという人にはお勧めではないでしょうか。なんせ、プレイの8割程度がロールプレイで構成されているのですから。

わいわい騒ぎたい。掛け合いを楽しみたい。アホなシステムを求めている。そんな人にはお勧めですよ。イヤ本当。

ショックだけを与えられて無責任に放り投げられる「人間仮免中」感想

壮絶な過去と統合失調症を抱えた著者が、36歳にして出会った25歳年上のボビー。苛烈で型破りで、そして誰より強靱なふたりの愛を描いた感動のコミックエッセイ。

読んだあと、しばらく脳の中で整理がつかずにボケっとそのまま二時間ほど経っていた。

感動したとか、感激したとか、笑ったとか、勇気をもらったとか。とにかくそういう風に言い表せられないくらいに、なにやらごちゃ混ぜになった気分にさせられる。とにかく、「ショック」を受けたというのが適当に思える。

本著は、卯月 妙子が歩道橋から身を投げ出す場面から始まる。そこから一気に過去へと飛び、彼女の人生、その一端を見る事が出来る。いや、押し付けられる。

一方的な「卯月 妙子」自身の世界、価値観、主張を淡々と流し込まれるのだから、たまらない。冷静に考えれば、自己中心的な考えは決してうなずけるものではない。しかしインパクトを伴う彼女の人生が、読んでいる私たちの価値観すらも捻じ曲げよう、捻じ曲げようと訴えかけてくるのだ。たまらない。

彼女は自分自身に起こる全てを受け入れているようで、それを素直に表現してくる。全てを。主観だけで描かれているから、素直に受け入れられると美しい話に見えなくもない。しかし、その裏側を思うと、彼女の周りに居る人々を思わずには居られない。スッキリとしながらも崩れた線に、著者の精神状態が見えるようで恐ろしい。

一コマ一コマに渦巻く執念のような何かを感じるようで、中々前に進まない漫画は初めてだった。

ある意味で、生きるってこういうことなのかもしれないな、と納得できる。かもしれない。

いくつにも重なるレイヤーが瓦解する恐ろしさ「リライト」感想

過去は変わらないはずだった―1992年夏、未来から来たという保彦と出会った中学2年の美雪は、旧校舎崩壊事故から彼を救うため10年後へ跳んだ。2002年夏、作家となった美雪はその経験を元に小説を上梓する。彼と過ごした夏、時を超える薬、突然の別れ…しかしタイムリープ当日になっても10年前の自分は現れない。不審に思い調べるなかで、美雪は記憶と現実の違いに気づき…SF史上最悪のパラドックスを描く第1作。

目まぐるしく主観が変わり、まるで振り落とされそうな速度を出しながらも伏線が積み上がっていくが、あくまで物語は淡々と進行する。

いったいどこに着陸するのだろうとのんびり構えていると、最後の最後であざ笑うかのような結末が待っている。

タイトルにもなっているリライト。過去が上書きされ、未来が知らず知らずに変わっていく恐怖に主人公はさらされる。しかしどうする事もできずに時間だけが過ぎていく。その焦燥感とやきもきさったらない。ページが少なくなるにつれてこの物語はどこに行くのかまったく分からず、伏線はさらに積み上がる。

十年前の思い出。未来人と自称する男の子との出来事。そして今、来るはずだった過去の自分。本。同窓会。アルバム。殺人事件。

まるでフィルムが折り重なったように立体的になったところで、衝撃的な結末、リライトの意味、全ての始まりが明らかになるのだが、まるでハンマーで振り下ろしたかのようにグチャグチャに散らばって開示される。そこから全ての断片の整理が始まる。本当の意味でのSFサスペンス。読んだ後にここまで読了感の無い本も珍しい。すぐに最初のページを開き、二週目を読んでしまった。人によれば三週目に入る事もあるだろう。

軽い読み味に、しかし複雑に積み上がる伏線の数。このシリーズは全てで4冊出る予定があるようだ。「リライト」がこの先どのような広がりを見せていくのか。楽しさと恐ろしさを感じながら待とうと思う。