まんまとハメられたとも思うけれども、私はダンガンロンパ2に絶望したんだ。
ネタバレを含みます。
まず、このゲームは凄く良くできている。物語の大筋としての謎は引きつけられるし、どんどん起こる事件はテンポもよく、プレイを辞めるタイミングを見失う。
さらに、推理が展開される学級裁判パートでは数いるキャラクターたちが議論を繰り広げ、積み上げられて、謎の真相へと行きつく。この瞬間が最高に快感で、脳の中の点と点が結びつくようにシビレを何度無く味わう。プレイヤーの推理が行き詰まるところを予想したかのように、アクションゲームのようなミニゲームが展開されるのも良い。手軽に本格的な推理、「俺が正解をみちびいたぜ」感をひしひしと感じる。
ただ、だからこそか。ダンガンロンパ2には絶望したのだ。いや、むしろそれが狙いだったのかと思わなくもない。だとしたら私は制作者にまんまと踊らされてるんだ。
ダンガンロンパ1に渦巻く謎は、本気で意味不明で、歪んでて、気持ち悪く、ドス黒いなにかだった。それに狂わされるキャラクターたち。彼らを殺人へと駆り立てる同期の作り方も見事だった。自分の記憶、思い出を餌に釣り上げ、操る。その醜さといったら、心が震えるようだった。さらにそれをプチリと潰すようなおしおきムービー。ゲームとしての細部に詰が甘かった気がするけれど、それでも補い余り有る物語だった。
けれども、今回のダンガンロンパ2は、前半、もっと言えば五章くらいまで完全に肩すかしであった。モノクマの誘導もそうだし、キャラクターたちの行動もそうだった。モノクマ、お前そんなんじゃないだろ? そんなで満足なのか? と私は思わず語りかけたくなったくらいだ。
最初の殺人はまだ「ダンガンロンパ」らしかった。正義感からくる自身の肯定、そこから起こる殺人、それを完全に否定するモノクマ。ああ、ダンガンロンパだなあって思った。それでもどこか綺麗だったのは否めない。醜さ、歪みがなかったからだ。まだまともだ、こんなもんじゃないだろ? と。
二章もまだモノクマらしかったといえる。動機の提示もそうだったし、揺れ動くキャラクターたちの掛け合いもよかった。けれども綺麗だった。この時点でなんだか違和感を憶える。仲間の死から固くなる結束、殺した方も、それを追い詰める方も、どこか綺麗に終わる。おいおいそれでいいのかよ、だ。
そんな感じが4章まで続く。四章なんて食べ物なしの空間に放り込まれるだけだ。あーあ、なんだそれはって感じ。モノクマ、お前ネタ切れたんだろ? そんなの誰だって思いつくよ。こんなの絶望じゃないよ。むしろ希望だよ。生へのしがみつきからくる殺人。それの何処が絶望なのだろう。それは希望でしかないはずだ。未来を獲得するという希望そのものの行為であるはずだ。
登場キャラに出てくる「狛枝凪斗」はトリックスターであり、まさにそんな展開を盛り上げようとしている。このキャラクター、実はプレイヤーの投影なのじゃないかなと私は考えながらプレイしていた。あの狂った希望への渇欲、絶望の否定はまさにダンガンロンパにもっと気持ち悪さを求めるプレイヤーの投影なんだ。その狛枝凪斗がメインになる5章はまさに急転直下の展開で、最後の胸くそ悪さも満足のいくものだった。ああ、これだよ。これこそがダンガンロンパだよ。けれどもそこにモノクマの歪みはない。あるのはむなしさからくるやるせなさだけ。どちらも正しく、どちらも歪んでいただけの。そこに絶望へのどす黒さがない。綺麗なもんだった。
そして明かされる謎、真相、絶望への勝利、希望の獲得。
あー、普通だな―という感じだった。普通すぎるだろう、なんだこれは、と。御涙頂戴みたいなエンディング。希望はあるよみたいなエンディング。そうじゃないだろ? ダンガンロンパ、お前そんなんじゃないよな!? 外は絶望にまみれていて、中も絶望にまみれていて、だけれど希望を捨てずにそこへ飛び込む。絶望の中で絶望にまみれながらも、ギリギリで希望を掴み取って外へ出る。それがダンガンロンパじゃない? こんな元気一杯希望一杯、未来は明るいよみたいなのは、違う。絶対違うよ、と。
だからさ、私はきっとまんまと踊らされたんだ。