群像劇として、キャラクターの特性を綺麗に描き出すことに成功している「ガケロウデイズ」書評

『カゲロウデイズ』他、投稿された楽曲の関連動画再生数が1000万を超える超人気クリエイター・じん(自然の敵P)。その本人による書き下ろしノベルが登場!全ての関連楽曲を繋ぐ物語が初めて明かされ、さらなる「謎」を呼ぶ!―これは、8月14日と15日の物語。やけに煩い蝉の声、立ち揺らめくカゲロウ。真夏日のある日にある街で起こった一つの事件を中心に、様々な視点が絡み合っていく…。新感覚の燦然たる青春エンタテインメント小説。

via: Amazon.co.jp: カゲロウデイズ -in a daze- (KCG文庫): じん(自然の敵P),しづ: 本

ニコニコ動画で楽曲の作り手として人気のある「じん(自然の敵P)」自ら手がけると言うことで、本書はかなり話題となった。元々、著者の曲はそれぞれに相互リンクしているようなニュアンスがあり、曲中のキャラクターが他の曲に顔を出したり、一部のコードが過去曲から引用されていたりと、ファンの心をくすぐるような仕組みを持っていた。
曲自体も物語性が強く、ファンたちは様々な憶測を交えながら曲を理解するという楽しみがあった。そんな中で「カゲロウプロジェクト」という、著者の楽曲を繋いだ物語をリリースしていく企画が始動、本書はその第一歩目というわけだ。

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無味無臭の”あの頃”が横に座る「学校の音を聞くと懐かしくて死にたくなる」感想

郷愁と哀愁。後悔と未練。 鬼才、せきしろが紡ぐ短編ライトノベル集。 担任の先生が教壇に立つ。いつもなら騒がしい教室が今日は静かである。 生徒たちは誰も口を開かない。 「無事、卒業式が終わりました……」 教室に響く音、廊下に伸びる影、卒業式の涙。 図書室の先輩、アルバイト中のキミ、文化祭の僕。 鬼才、せきしろが自由律俳句、108字×108編のショートショートに続き挑んだ新ジャンル“短編ライトノベル”堂々開幕。

via: Amazon.co.jp: 学校の音を聞くと懐かしくて死にたくなる: せきしろ: 本

短編「ライトノベル」とされているが、まさに「ライト」だと思う。ただ、一般的なライトノベルの枠には絶対に入らないが。

まさにタイトル通り、登下校の足音、放課後の吹奏楽部の練習、チャイム――あらゆる「学校の音」に懐かしさと同時に、痛さのようなものを感じる人を狙い撃ちするような本だ。多感な時期を集団で過ごし、若く極端な思考による哲学を組み立て、それなりに充実した生活を送って、社会に出てみてふと振り返る。あの頃の自分は輝いていたのか、それとも、実はそれほど輝いていなかったのか……。本当は「無意味」だったのではないか。そんな風に錯覚(もしくは気づか)されるものとなっている。

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